一億円。ぼくたちは、その差額の中で競い合っている。
稼げ稼げと言うわたしは、そもそも幾ら稼げばプロを名乗れると考えているのかについて書いていなかった。
売れるってさ、イコール生活ができる。でいいと思うの。
それは、安定した月収でもいいのだけど、創作なんて水商売に月割り計算を当ててもね、同じ理由で年収でとやかく言うのも無理があるので、やっぱり「生涯年収」ですよね。
ズバリそれによって生涯食えるか食えないかでしょう。
生涯年収と言えば、学歴によってその獲得額は違ってきます。
早速、検索して詳しいサイトを拝見させていただきました。
平成28年度賃金構造基本統計調査によると下記のようになります。
男性の学歴別生涯賃金(退職金含む。←平成25年度就労条件総合調査調べ)
- 中卒およそ198000000円
- 高卒(高専、短大含む。)およそ240000000円
- 大卒およそ287000000円
女性の学歴別生涯賃金(退職金含む。←平成25年度就労条件総合調査調べ)
- 中卒およそ148000000円
- 高卒およそ184000000円
- 高専、短大含む。およそ200000000円
- 大卒およそ235000000円
うぉ、中卒と大卒では男女ともに一億円近く差がでるのか、けっこう昔にも調べた事があったけど、その時も一億円近くの差額があった記憶がある。でも今あらためて見ると当時よりすげえ格差を感じるのはナゼ?
プロを名乗りたければ目標金額一億五千万。
肝心なところは、中卒女性の生涯賃金一億四千八百万円です。ここが、おそらく現代日本で生涯生きていけるギリギリの金額なのでしょう。
ここに到達すらできない創作者はヤバイです。
これ以下では家族はおろか自分一人でさえ人並みに暮らせない恐れがあるのです。
その額が途方もない天文学的な数字と思う人には創作から足を洗っていただいた方がその世界は浄化されるでしょうね。
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きびしくないよ‼最高額ではなくて最低目標額なんだからね。
クッと苦虫を嚙んだでしょ。そんなあなたに朗報です。時代は正業とは別で副業を推奨される世の中となってきています。
専業から兼業への時代です。てか、田舎じゃそりゃ普通の事で、家業(主に農家)と会社員の掛け持ちなんて当たり前でした。
はい、まさか専業の俳人、歌人様はおられませんよね。
誰もが他人に応えても恥ずかしくない立派な正業をおもちの現代俳人、歌人様ばかりです。
ここで上述の設定金額に変更が可能になりました。
細かい事はめんどうくさいので、ここは気持ちよく上記設定金額の半額にしましょう。
その額およそ七千五百万円。
副業で得る金額は正業で得られなかった不足金の穴埋め程度と考えられる事が普通でしょうが、創作者にそんな甘えや妥協はゆるされません。
なんせ文化人なのですから‼その数は一握りであっても、文化人はそれで食っています。食ってもらわにゃ困ります。
なんども書いたが、そうでなければ趣味人じゃねえかyo
そんなわけでございまして七千五百万円の壁に到達できてこその職業作家さんです。
さて、この七千五百万円ですが、その入手期間については制限はありません。
バカ売れした一年で稼いでも七千五百万円。生涯をかけても七千五百万円。
評価されるのは、自作によりその額を稼いだ実績のみです。
だから、生前に破産したとしても、すでに稼いだ金額が七千五百万円を突破していたなら問題なしですね。
売れたとは生活できる部数を指して言うのです。
出版部数じゃないからね。収益額だから。
一般常識として100000部売らなければ人並みの生活さえままならない世界において、自分らのジャンルは平均100部しか売れないところなのに10倍もの売り上げだぞと自慢されましても、たかだか1000部だからね、言われた方としては「それがどうした。」としか思わないわけです。
言ってる本人はまやかしの呪文でも唱えているつもりなのでしょうか?
だけど、そんな呪文に引っかかるのは、ぼけ老人か世間知らずのガリメガネぐらいでしょう。
一般人は「食えねえままじゃねえかよ。」と、耳にするまで興味が無かった自称(一族郎党の声ふくむ)ベストセラー俳人(歌人)まで犬ころを見る目で見るようになります。
それだけ吠えてどんな餌を貰えるんだよとそちらが気になる。
想像するに、稼げないわけだから作句(作歌)とは別のお仕事を恵んでいただくのだろうな。
ねえ、最低限の生活ができそうな出版部数にも遠く及ばないのにですよ凄いだろと勝利宣言をされてもねえ。(事実その成果の主力は一族郎党だろうし。)
蔑みと憐れみしか生まれんわ。
ところで生まれながらの野良(犬など)は怖いし、逞しいし、時に威厳まで感じさせ立派やなと思うこともあるけど、食えない自称文化人に対しては捨てられた座敷犬を見るような目で見そうだから目につく場所には近づかないようにしないとな。
サノバビッチ
ー 捨てられた座敷犬は威嚇なんてしません。金持ちそうなマヌケ面を目にしたら切れて飛ぶほど尻尾をふるんやで。
「まあ、こんな可愛いワンちゃんまで捨てられているなんて、飼い主はなんて酷い事を。」
その声の主は待ちに待ったやつらの希望。
もはや最期の時まで立てる瞬間は訪れないだろうと股の間にしまわれていた白地に先っぽだけが黒毛の尻尾たち。
一部地域では火災を呼び込む模様として忌み嫌われている蝋燭尻尾が希望の明かりを灯すが如く一斉にいきり立つ。
彼女たちが近づいてくる。「それにしても暑い日がつづくわね。」
ゆれる蝋燭。
ゆれる。ゆれる。頬を打つその風圧に押されて心がかたむくマヌケがいた。
それを察知したやつらがさらに激しく尾をふる。それはまるで理不尽な世界を焼き尽くす炎の如し。
マヌケのハートに溢れんばかりのドッグフードを見る駄犬。もう少し、もう少しだオレ、がんばれオレ、とどけオレの尻尾。やつのハートにぐさりと挿され。
「熱いわね。」
そもそも現実に彼女たちは現れたのか?あれはオレたちの希望が生んだ集団幻覚ではなかったのか?彼女たちは去った。オレたちを残したまま去ってしまった。
オレたちは火が消えた蝋燭のように先っぽだけが黒い尻尾を力無く床にたらした。
それは辞世の句を書き上げた毛筆のようにも見えた。
駄犬が啼く。そうさ、俺たちには生まれた瞬間から希望の火などはなかった。
消えていたんだ。母犬の羊水の中から一度も火が灯ることもなく、初めから鎮火していたのだ。
ある駄犬がつづけて啼く。おまえなんてまだマシなほうさ。オレなんかはこの世に生み出された瞬間にはダンボールの中に入れられ濡れながら川の上を流されていた。
ある駄犬も啼く。オレもそうだった。火が灯るはずもない。オレたちはづっと暗闇の中を流れて来た。
流れ着いた場所がここだった。それだけのことさ。・・・なぜ、あの時あのまま・・・
オレたちは母犬の胎内を思った。・・・帰りたい。
望み通り扉は開かれた。「さあ、おまえたち生まれ変わりの時だ。」
ー
こんな命懸けの駆け引きを目の当たりにしたら、さすがに、かわいそうとは思うけど、かわいいなんて蚤の糞ほども思いません。
「Bang」・・・おいこら「Bangと言ったら撃たれたふりだろが、このバカ犬」と何度かやらかすであろうおじさん、虐待で連行されてしまいますわ。
「歌集売りのガリ」勤労少女は歌人を笑う
「よう、どうだった?」「うん。今夜も寒いわ。」そう言ってすれ違うマッチ売りの少女A。
「あっ、待って。」呼び止めるぼくのほうを振り向く少女A「なにか用?」
(このこ冷めてんな。とぼくは思った。)
「ぼくが一個買うよ。」こう言うと、少女Aは籐製の手提げ籠の中を小さな手でまさぐった。
少女Aはとっておきをぼくに売ってくれようとしていたのだ。
それにしても、♪じれったい。じーれえたいー♪
「どうぞ。」ちいさな手のひらに炎のように真っ赤な箱がひとつ。
ぼくは赤一色のマッチ箱を受け取ると、少女Aにお代を支払った。
少しだけ「いいよ。」とお代の受け取りを断ってくれるかもと期待してしまったけど、それは甘かった。
少女Aはお代を握りしめるや「気をつけて」と謎めいた言葉を残して新雪の上に足跡を残しながら西の親方の家へと帰って行った。
「なんてミステリアス。」
昨日おぼえたばかりの言葉をぼくは口にしていた。
なんだか、しっくりときた。こんなシーンで使用すればいいんだと思った。「なんて、ミステリアス。」
さて、一冊も売れないと親方にぶん殴られるし、もう少しがんばってみるかと繁華街の方へ行ってみた。
大人が帰るにはまだ早い時間だったけど、今日は寒いし人影はまばらだった。
ぼくはメガネをかけた中年男性を追った。何人も追った。けれど、彼らが足を止めることはなかった。
「チェッなんだよ。えらっそうな顔をしているくせに、歌集一冊も買ってくれないじゃないか。」ぼくは世の中の大人って実はバカなんじゃないかと思うようになっていた。
そのうちメガネをかけた中年男性は見かけなくなってしまい、町から人影はなくなってしまいました。
どこを見渡しても誰の足跡も雪の下に埋もれてしまいました。
ぶん殴られる。
ぼくは雪の中に顔を埋めました。冷たい風と雪はいくらぶん殴られたっつて痛みを感じさせません。
みんなは嫌がるけど、ぼくは寒い日があんがい好きでした。
だって、歌集ってまったく売れないし、いつの頃からか、親方はぼくの事をぶん殴りたくって、わざと売れない歌集を売りに出させているんだと思っていたから。
そんなことを考えていたらなんだかおなかの中がとても熱くなってきました。
ぼくを殴るための歌集。
いったいどんなことが書かれているのだろう?毎日のように親方に暴力をふるわせるのだからさぞかし呪わしい言葉が書かれているのではあるまいか?
今までは、こんなことを考えることもなかったのだけど、なぜだか今夜は歌集の中身が気になりました。
一度気になると、どうしても中身が知りたくなりました。
そうです。ぼくはまだこどもなのでした。
町の明かりは消えてしまいましたが、もはやこの好奇心を誰も消す事はできません。
ぼくは覚悟を決めて歌集を手に取ると、勢いのままにすかさずページをめくりました。
ところが、勢いよく開いたまでは良かったのですが雪明かりだけでは文字がどうしても見えませんでした。
「そうだ!」ぼくは少女Aから買った真っ赤なマッチ箱をポケットから取り出して一本すりました。
するとどうでしょう、辺りがやさしく照らされていくではありませんか、それだけではありません。
やわらかな温かささえも感じるのでした。
しかし、その時間はマッチ一本分の時間しかありません。
ぼくは、覚悟したのです。
だから、ページを一枚読むごとに破っては、マッチの火を消さないようにくべていきました。
不思議な事に、その火はマッチの火と同じ明るさと温かさでぼくを包んでくれました。
ぼくは親方の家に帰るのも忘れて売れ残った歌集のページをめくりつづけました。
そして一枚また一枚とページを読み進めるたびに、破っては火の中に投じていきました。
ページはまだ半分以上も残していたけど、ぼくは歌集を読んでいませんでした。
そこに書かれていた文字は呪いの呪文などではなく、こどもの目から見てもただの駄文でした。
それでもぼくは歌集を破りつづけていました。
その明るさと温かさを得るためだけに親方全霊の歌集を燃やしていたのです。
一冊の歌集が燃え尽きたころ細くなって闇夜に消えていく煙を見ながらぼくは思いました。
親方はただ、ぼくを殴りたいだけなんだ。この思いだけは間違っていないのだと確信したのです。
だって、これじゃ売れるわけがありません。読み始めて間もなくどこのだれが、こんなくだらない紙の固まりを買うんだよと、ぼくでさえ思ったのですから。
ぼくは、ただただ灯りと温もりを求めて売れ残りの歌集を破っては火の中に投じていたのです。
そうして一冊の歌集は白い雪の上に未練たらしく灰色の模様をひきづりながら闇の中へと吸い込まれていきました
赤いマッチ箱のマッチは、まだ沢山と言えるほど残っていました。
売れ残りの歌集だってぼくの体を雪の深くまで沈ませるほど残っていました。
ぼくは親方の家に向かって歩きました。
覚悟を決めたぼくは扉の向こうで酔っぱらっている親方に話しかける。
「とうちゃん、もう短歌なんてやめてよ。歌集なんていくら編んだって売れないじゃないか?かあちゃんだって働きに出たまま帰って来ないじゃないか?」
「うるせえ、この糞ガキゃー。」怒鳴りつけるやいなや、表紙を広げてバタバタと音をたてながら空中を舞う売れ残りの歌集。
そのままどこかに飛んで行けと願うぼくに向かって飛び掛かって来る売れ残りの歌集。
ぼくはうらんだ。ぼくはにくんだ。
なにをだって?売れ残りの歌集を足下に積み上げていくぼくのからだを存在を、ぼくは、ぼくをゆるせなかった。
いっそ、こんなぼくなんて見えなくなるまで埋めてしまえ。そう思いながら売れ残りの歌集をぼくに投げつけてくるとうちゃんの姿を見つめていました。
やがて、とうちゃんの姿はぼくの目から消えてしまいました。投げつけられた歌集がぼくの目を潰し、ぼくの命まで奪ってしまったのです。
あの真っ赤なマッチ箱をポケットに入れたままぼくは売れ残りの歌集の下敷きになり息絶えていました。
とうちゃんは狂ったように何かを叫びながら死んでしまったぼくを家に残したまま火をつけたのです。
ああ、なんて明るくて、温かいのだろう。ぼくはやっと冷たい世界から解放されたのです。
もう二度と売れ残りの歌集を見ることもありません。
「あら、なんて日差しの良い朝でしょう。今日はきっと素晴らしい一日になるわ。」マッチ売りの少女Aが窓の外を眺めながら珍しく笑った。