新聞歌壇の楽しみ方 現代歌人様は偉くなるほど詠めません 

2019年10月15日

歌壇 現代歌人様



おいっ、いいか「平和・人権・反戦」このあたりをテーマにして幾つか創れ。


あとは俺の知り合いに新聞社で勤めていてけっこういい地位にいる奴がいるから、そいつに頼んで掲載してもらおう。


でっ、だ。思想に問題があったことにしてもらおうじゃないか。

なにも創らず天才と呼ばれる方法 そうだ世界を敵にまわそう



証言1:きゅうちゃん


とある天才きゅうちゃんが叫ぶ。


詠めば弾圧される。弾圧されるほど影響力がある名作を詠めてしまうのがぼくなんだ。


だから、ぼくは反戦句も反戦歌も詠まない。


詠めるよ、詠めますよ、だけど詠めば国家権力によって弾圧されるのです。


一部心無い読者の方からは「あの程度の作品で自惚れるな」と非難の声が上がっているのも存じ上げていますが、だからこそぼくは声を大にして言いたい。


あの程度の作品、たしかにそうです。あの程度の作品でさえ弾圧の的にされたのです。


もっといいもの、すばらしいもの、詠めるよ、詠めますよ、しかしです。あれ以上の作品を詠んだとしてはたして掲載はゆるされるでしょうか?


あなた方には、その程度の想像力さえないのですか?


そこのあなた、あなたは国家と戦えますか?ぼくは正直怖いです。詠めるよ、詠めますよ、だけど国家は名作をゆるさないのです。


詠めるよ、詠めますよ、国家さえなくなれば、ぼくはいくらだって名作を詠めます。


ぼくが詠まないのは国家がそれをゆるさないからなんだ。


ぼくの天才を知りたいと言うなら、あなたたちには国家を倒す責任があります。


それは、ぼくのためではない。天才を知りたいと言ったあなたたちのための行動です。


詠めるよ、詠めますよ、いくらだって詠めますよ、だけど国家がそれをゆるさないんだ。


証言2:教授


「反戦句、反戦歌が無い。」ですと?すでに社会的影響力のあるわたしがそのような作品を発表した場合におこる周囲からの反響を考えたことがあるのですか?


ええ、わたしならみなさんの期待に応えられるだけの反戦句でも反戦歌でも詠めるでしょう。


しかしですね、発表後の騒ぎを想像してごらんなさい。


寝る子を起こすような真似はしたくはありません。わたしが望まなくても、わたしの作品は物議をかもすのです。


わたしだってですね、世界平和を願う人たちの心の安寧を願えば反戦句も反戦歌も詠みたいですよ。


しかしですね、はたして彼らは黙ってそれを読めるでしょうか?


あの蠢く日の丸を御覧なさい。あの日の丸の下に集う人たちが声を揃えてわたしの反戦歌を朗誦してくださるでしょうか?


きっと彼らは呪詛のような言葉をわたしに吐きかけることでしょう。そんな彼らの様子を目の当たりにした大衆の気持ちを察してみなさい。


大衆は彼らの中に醜い自分を重ね見るかもしれません。戦争の火種を自分たちの中に感じるかもしれません。


わたしにはわかります。わたしの詠む反戦歌はあのデモ隊を刺激し、それは結果的に大衆を絶望へ追いやる行為になりかねないのです。


わたしは反戦歌を詠みたい。わたしなら幾らでも詠める。しかし彼らの存在がそれをゆるしてはくださらさない。


悲しいかな、わたしのような偉人を憎む哀れな一群れが存在する限り、残念ですがわたしが反戦歌を詠う日はありません。


それは他でもない平和を願う全市民のためでもある。


証言3:歌人


歌人なら当たりまえに反戦歌の一つや二つは残しておけとおっしゃいますがね、そんな煽りをする人ほど詠んだら詠んだで嬉々として批判をしまくるでしょう。


わかります。


どうして、そんな人たちのために反戦歌を詠まなければいけないのでしょうか?


あっ、詠めますよ。当然ですよ、わたしをなんだと思われているのでしょうか?まさかうっすい恋歌しか詠めない恋に恋する乙女ちゃんとでも思われているのでしょうか?歌人ですよ、現代歌人様ですよ!詠めるに決まっているではありませんか。


今ないからと言って面白半分に煽ってくる方はおっしゃるような反戦歌は詠めるのでしょうか?詠めますか?わたしなら詠めますよ。ただ、煽られたから詠みましたでは反戦歌を愚弄する行為にしかなりません。だから今はその気持ちを温存しているだけです。


あのような粗野で無知な方の煽りにいちいちのせられていては反戦歌はおろか短歌そのものを貶めかねませんからね、世の中がもっとスマートな方たちばかりになれば自ずと反戦歌は生まれ市民は素晴らしい反戦歌に心を満たされることでしょう。


無能無才なぼんくらさんが歌人にたてつくのは一興ではありましょうが先ずは新人賞の一つでも受賞して、歌集の一冊でも出版を果たしてからおっしゃっていただきたいですよね。


詠めますよ反戦歌。詠めますが愚かな人の煽りには負けません。わたしたちは平和を愛し敵をも愛す進歩的現代歌人なのですから。


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選者はいいよ、安全尚且つたのしいよ


ああ、君たち本日より無期限で反戦争できる政府強化期間といたしますので、とりあえず反戦歌を詠みなさい。


選については引き続き我々が担当することになる。


うん、これはいいね。総理への憎悪が伝わってくるよ。入選だね。


翌日······避難殺到。


うん、まあ我々は作者ご本人ではないからね。ただ我々としては総理に対する作者の心情がこれほど強く表現されている作品は他になく、偽らざる市民の声として世に問わねばならないと使命感にかられたまでの事であり、指摘されるようなお上にたてつく気持ちなどはこれっつぽっつちもございません。


うん、これはまた素晴らしいね。日本は謝罪と賠償をしないとね。もちろん入選ですね。


翌日······避難殺到。


うん、まあ我々は作者ご本人ではないからね。ただ我々としては国家に対する作者の心情がこれほど強く表現されている作品は他になく、偽らざる市民の声として世に問わねばならないと使命感にかられたまでの事であり、指摘されるようなお上にたてつく気持ちなどはこれっつぽっつちもございません。


うん、うん、これは、またまたいいね。平和憲法でノーベル平和賞ほしいねえ。入選。


翌日······避難殺到。


うん、まあ我々は作者ご本人ではないからね。ただ我々としては平和に対する作者の心情がこれほど強く表現されている作品は他になく、偽らざる市民の声として世に問わねばならないと使命感にかられたまでの事であり、指摘されるようなお上にたてつく気持ちなどはこれっつぽっつちもございません。


こうして選者は避難殺到を繰り返していくのでした。


新聞サイコー‼


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